1年後

「こんにちは。そこで靴を脱いで。スリッパをどうぞ。うちの店は昨年の4月に改装したんだけど、それを機に靴を脱いで入るように変えたんだ。
大事な場所を大切に使いたくてね。それとお客さんには家に帰った時のようにリラックスして欲しくてさ。」

 

「みんなの紹介は後にするとして…あ、この部屋で少し話をしよう。改装前は事務所に使われてた部屋。ここでパソコン仕事することが多くて篭り気味になっていたんだけど、今この部屋はカット講習や地域の人に向けたイベントに使われている。」

 

「まずは、カットマンがどんなお店か聞いてほしい。簡単に言うと関わってる人達の個性が科学変化を起こしておもちゃ箱になってるみたいな面白い場所だよ。あ?よくわからない?」

 

「たとえばこのお店には部活がある。カメラに釣り、英語、音楽、落語、お絵描き。これからも部活は増えていくみたいだ。それぞれお客さんと繋がって楽しんでるよ。カットする場所にカウンターがあったでしょ?あそこでミーティングしたり、頻繁に飲み会もやっている。」

 

「これはみんなの才能メニュー。それぞれ理美容師としてだけじゃなく色々な顔を持ってる。お菓子作り、心理カウンセリング、革製品を造る奴もいる。うちはダブルワークはあたりまえ。トリプルワークでもやっていい。カットマンに来たら大概の事は解決するって言われてる。みんな充実してるみたいだね。」

 

「あと、この場所の壁は芸術家を応援するために使われる。月ごとに写真、絵、書が飾れられ、お客さんも毎月楽しみにしている。」

 

「そろそろ仕事仲間を紹介しようか。」

 

「こちらはシェアサロンの仲間。
鏡一面を定額で貸してるんだ。面貸しという扱いだからカットマンとは料金も提供してるメニューも違う。でもそれはお客さんには関係ない。お客さんの視点から見ると面貸しであっても、同じ店の従業員だ。お互い協力してやっていくことはお互いの利益になる。なによりお客さんにも良い。だから応援しているんだ。」

 

「彼女は理容師で、二児の母。
生活スタイルに合わせて出勤時間を調整しているから、子育てで忙しいお母さんも働きやすいと思う。彼女は完全歩合制で働いていて、ヘアカラーが得意だから、ほとんどのカラーを任せている。」

 

「次はパート理容師の女性。月に何日かだけ働きに来る。ここにはいろんな働き方の人がいるんだよ。月に何日かだけでも待ってるお客さんがいる。それでいいんだ。」

 

「次の彼女は理容師であり、顔剃り技術のトレーナー。理論的にわかりやすく教えるのが得意だ。基本からしっかり教えてもらえるってとても恵まれてることだと思うよ。」

 

「そして僕。基本ゆるくて何でもあり。月の半分くらいは旅しながら髪を切ってる。信頼できる仲間がいるって幸せなことだよね。」

 

「次は君をみんなに紹介するね………

見習い希望の城熊くん15歳(仮名)を店に迎えるシーン
1年後の妄想劇場 おわり。